オヤジ☆ブログ【シャブレ・ジブレ】 〈不定期更新 目標毎週2回!〉

絵:きよた 文:たなべ


採用する側とされる側。そこにある矛盾

 企業が求人広告を出すとき、求職者側の人権を尊重することは必須です。何を当たり前のことを!と思われるかもしれませんが、比較的小規模の企業サイトでは、未だに求人する側の自由が幅を利かせているのを散見します。

 

 

 以下は、最近目にした、ある有名店舗の求人広告からの抜粋。

 

 

 私達と一緒に挑戦してくださる○○○を募集しています。

自発的に思考でき学びと向上心に長けたやる気の有る方、前向きで明るい方。

工夫と表現力のあるタレント性に富んだ方。

笑顔とホスピタリティに溢れた方。

経験者優遇ですが、未経験の方でも学ぶ意欲が高く、ネガティヴな方でなければ大歓迎です。

興味の有る方は写真の添付された履歴書と自己PRを下記のメールにお送り下さい。

 

 

 これ、リクナビなどの大手求人広告サイトだったら、絶対に掲載不可能です。今どき、年齢や性別、国籍などを限定した求人募集が認められないのは当たり前。それだけでなく、外見や性格も求職者側の権利、人権として法律がその保証をしているからです。

 

 だから、先ほどの例でいえば、「前向きで明るい方」はNGワードとなります。「タレント性に富んだ」もNG。「笑顔溢れる」も。「ネガティブでなければ大歓迎」なんて絶対NG。

 

 僕も求人させて頂く側の立場ですから、求人する側の切望感は理解できます。きっと、これを書いた方は、過去に求めているタイプではない方を採用して懲りた経験をお持ちなのでしょう。でも、日本国憲法に「すべての国民は、個人として尊重される。」と書かれている通り、求職者は個人として尊重されて然るべきです。

 

 

 

 ただし、ここに大いなる矛盾があるのです。

 

 

 

 

 採用する側には「採用の自由」があるので、より多くの人に門を広げているのはあくまでも建前。結局は、自社の求める基準に沿って採用するだけですから。先ほどの有名店舗の例でいえば、色々な方が面接に来られるとは思いますが、NGワードの人こそが優先的に採用されるのは当然のことです。

 

 

 今、多くの企業で、本当は採用とは程遠い人がその求人に期待し、自分のどこに問題があったのかわからないまま、採用を見送られています。見送られた原因を教えられれば、次につながる経験となるかもしれないのに、そんなことを教えてくれる企業はほとんどありません。

 

 その結果、自分の何が悪いのかもわからぬまま、ただただ社会からの疎外感を感じている、という人は少なくないと思います。

 

 弱肉強食の世の中だから仕方ない? 悪いのは世の中から外れているその人自身?

 

 それって、なんかつれなくない? 器ちっちゃ過ぎじゃない?

 

 

 

 

 だから、僕はスタジオの面接で、その人のため伝えたほうがいいと思ったら、時間が許すときは正直にお話しするようにしています。現時点では採用に至らない理由を。よろしければ、また来てくださいって気持ちで。

 

 それを聞いて、涙流されて感謝してくださる方もいれば、こんなところに用は無いから一刻も早く去りたいって方もいます。過去には、そうやって数年後にまた来てくださった方もいましたし、3度目の面接で採用させて頂いた方もいました。

 

 そのうち、恨みを買って刺されるかもしれませんが、その時はその時だと思っています。と、いっても、僕も妻子ある身。下の子なんて、まだ小学生です。

 

 もし仮に、眉毛とまぶたと鼻と唇にピアスが入っていて、顔の半分にタトゥーの人が、熟れ過ぎたイチゴのような舌でナイフを舐めながら面接に現れたら。

 

 刺されたくないので、採用しちゃうかもしれません。その時は、スタッフのみんな、新しい同僚をよろしくね!!

 

 

 

 


幽霊よりも怖いもの

 

四谷怪談【よつや-かいだん】元禄時代に起きたとされる事件を基に創作された日本の怪談。基本的なストーリーは「貞女・岩が夫・伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐を果たす」というもの。怪談の定番とされ、折に触れて舞台化・映画化されているため、さまざまなバリエーションが存在する。(ウィキペディア「四谷怪談」より)

 

 

 「怪談なんかどうですか?」

 

 二人いるSくんのうち、この秋から彼女が遠くへ行ってしまうほうのSくんに「ブログのネタ、何かない?」って聞いたら、そう提案されました。どうやら、以前書いた記事(「どうでもいい話」)が頭にあってのことのようです。

 

 正直言って、僕に怪談的なネタの持ち合わせなどありません。恨みとか、呪いとか、取り憑くとか、まったく興味がありませんし。そもそも、世の中にある「スピリチュアル」な話のほとんどが「単なるビジネス」だと思っています。

 

 それでも、どうしても身震いするような話をと言うのなら、こんなのはいかがでしょう。

 

 

 

 まだ東京が、江戸と呼ばれていた頃、現在僕のいるスタジオ(PART1)から数十メートルほどのところにお岩さんという女性が住んでいたそうです。後に「東海道四谷怪談」として有名になった幽霊「お岩さん」のモデルとなった方です。

 

 現在、彼女の家があった場所付近には、そのお岩さんを祀ったとされる神社とお寺があります。元々は神社だけだったそうですが、お岩さん没後200年が経った明治の頃、火災により社殿を消失。事情により神社は中央区に移転することとなりました。それから元の現在の地に神社が再建されるのは昭和27年、70年以上も先のこととなってしまいます。

 

 その結果、江戸の頃からの集客力ある観光スポットだった「お岩稲荷」を失い、困り果てていた地元の方々は、焼失した神社の跡地近くに小さなほこらを祀りました。そのうち、そこに新しい「お岩稲荷」を作ることで地元経済を再び盛り立てようという話が湧き、やがて今のお寺が建つに至ります。

 

 

 今では、神社もお寺もどちらも「お岩稲荷」ののぼりを立て、お互い元祖だか本家だかを主張し合っているそうです。狐なのに、犬猿の仲ってちょっと笑えますけど。

 

 お岩さんも真っ青の観光スポット復興話。お岩さんの幽霊話より僕はこちらのほうが百倍怖いです。

 

 ちなみにお寺の方は、ご利益スペックに「男女の仲もつ縁結び」を謳っています。この秋から寂しい思いと向き合わなければならないSくんにおススメのお岩さんです。

 

 

 


チームのポテンシャル

 あるカメラマン(フォトグラファー:略してP)と話していたら、こんなことを言っていました。

 

 

P:「最近のスタジオマンってさ、別にカメラマンになるつもりないんでしょ。」

 

僕:「え?」

 

P:「この間、○○○に行ったら、スタジオ入ってくれた子が言ってたんだよね。別にカメラマンとかになろうとは思わないって。そろそろ次の仕事探さないといけないとか。」

 

僕:「えー!じゃー何のためにやっているんですか?スタジオ。」

 

P「でしょー。別にいいけどさ、オレの撮影には入って欲しくないよなー。でも、今どき、そんなもんらしいよ。」

 

 

 確かに、最近は写真系の大学生や専門学校生にお聞きしても、卒業後は撮影に関わる仕事ではなく一般的な仕事を考えている方が少なくないと聞きます。でも、それはあくまで学生さんのお話です。まさか白ホリの撮影スタジオに勤務するアシスタントまでもがそうなってきていたというのには驚きました。

 

 

 もっとも、経営者の立場から考えればわからないでもありません。スタジオを維持・運営させるにあたっては、何よりスタッフの確保が重要です。効率よく人を集めるには、求人の条件のすそ野を広げるかのが一番手っ取り早い方法ですから。

 

 「将来、真剣にフォトグラファーを目指す人」って募集するより、「誰でもできる簡単なお仕事です。専任のコーチがやさしくていねいに教えてくれます。働きたいときに働けるので、気軽にご応募ください。」ってうたうほうが人は集めやすいはずです。

 

 

 ただし、チーム全体の雰囲気には細心の注意が必要です。

 

 人間の集団心理に「2-6-2の法則」というものがあります。企業でも学校でも、スポーツチームでも、人が集団になると決まって「意識が高く優秀な2割」と「意識が低く怠ける2割」と「そのどちらでもない6割」に分かれるものなのだそうです。

 

 この法則の興味深いところは、仮に「意識が低く怠ける2割」がチームの足を引っ張っていると考え、その2割を除外してみても、残ったチームのメンバーの中で「2-6-2の法則」が働き、新たな「怠ける2割」が出てきてしまうというところです。

 

 これにプラスして僕が経験から学んだのは、「どちらでもない6割」は日和見的な傾向が強いので、その時の雰囲気でどちらか側に寄りやすいのです。「優秀2割」側に魅力を感じれば「6割」はそちら側に寄りチーム全体がハイポテンシャルな組織になっていきます。逆に「怠ける2割」に魅力を感じれば、チームのポテンシャルとしては残念な組織になってしまいます。

 

 チームの底辺を「フォトグラファーを目指してはいるものの、その努力はおろそか」な2割が担うか、「フォトグラファーになるつもりはない」2割が担うか、組織マネージメントを考えればすごく重要な問題なのです。

 

 時代が変わっても、僕のいるスタジオだけは絶対そうはなりませんけど。もっとも、学生さんからすると、それが“厳しいスタジオ”と言われるゆえんだそうですが。

 

 

 全員で目指しているから、楽しいのにね。

 

 

 

 

 


Sくんのお母さんへ

 

 こんにちは。Sくんがお勤めのスタジオマネージャー田辺といいます。

Sくんから、いつもこの拙いブログをお読みくださっているとお聞きしました。ありがとうございます。

 

 

スタジオでのSくんは、いつも頼もしいほどに頑張ってくれています。私は、彼に近い将来このスタジオを背負って立ってくれることを期待すると共に、やがてはフォトグラファーとしてしっかりと生計を立てられる人になれるべく、出来る限りの応援をしていくつもりです。

 

 

 Sくんは今どき珍しく、しっかりとした自分を持った方です。もちろん、まだまだ発展途上ではありますが、私は彼がこのままブレることなく日々の好奇心を大切にし、常に現状に安住することなく成長のための負荷を自分自身にかけ続けていけば、必ず良い結果を勝ち得る側の人間になるだろうと確信しています。

 

 

 現役の若いスタッフには理解しにくいことだと思うのですが、フォトグラファーに必要な要素や考え方の中で、スタジオで学ぶことのできる事はわずか5%~20%に過ぎません。従って、スタジオで一人前になった程度の自分に満足するような器の小さな人では、その先この業界でやっていくのは難しいと言わざるを得ないのが現実です。

 

 

 しかし、ご存知の通り、真面目で素直な若い人たちが、ただただ目の前のことに夢中になってしまうのはいつの時代も同じです。そこで私のスタジオでは、アシスタントとして一人前になるために必要なスキルや知識・経験値とは別に、もっと大局的で大切なものがあることをSくんはじめスタッフ全員に事あるごとに周知し、その存在への気付きを促すようにしています。

 

 

 具体的にいえば、自分がそれまで気付いていなかった視点や価値観に気付いた瞬間、それまでの自分がちっぽけで情けなくて恥ずかしい存在に思えてしまうその気持ちを素直に受け止め、正面突破でそれを乗り越える強い人間性を持つということです。

 

 

 小難しい言葉で言えば、心理学における自己防衛機制によってその場をやり過ごすのではなく、創造的破壊によって自己の成長を遂げられるパーソナリティーをこのスタジオで習慣化していってもらいたいのです。

 

 

 その結果、スタジオ後もさらに会得していくべきフォトグラファーに必要な要素、その残りの80%~95%を確実に自分のものとして、理想を実現して頂きたいと願っています。

 

フォトグラファーは、一般の仕事と比べれば色々な意味で大変な職業であるかもしれません。それでも、実現するだけの価値は大いにあります。

 

 

 カッコ良くて、頼りがいがあって、しっかりお金も稼げて、お母さん想いの息子さん。この四つの条件全てを満たすまで、今しばらくお待ちください。

 

 

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 追伸:お母さんご指摘の通り、最近のこのブログの更新が滞りがちなのは、ネタ切れが原因です。何かネタがございましたら、遠慮なくご提案頂けますと幸いです(笑)

 

 


小耳にはさんだいい話

 日々の撮影現場から、またはちょっとした息抜きの場で、ふと耳にする言葉があります。やがては写真を仕事にしていきたいと考える人たちにとっては、こういった中にこそ、この業界の実情や知っておくべき大切な事がちりばめられていることをご存知でしょうか?

 

 「名言」というほどの大そうな枠には収めにくく、日頃あまりにもさりげなく語られ流れ消えていく言葉たち。でも、そのまま忘れてしまうにはもったいなさ過ぎる言葉たちを拾い集め、数年前からこのサイト内の「小耳にはさんだいい話」というページに積み重ねてきました。

 

 その中から僕が勝手に選んだ言葉をいくつかご紹介。

 

 

 

『“誰もがカッコいいと感じる写真”を撮れるようになれば、ガゼンやる気も出てくる。本当は、それが撮れないからやる気が出ないのに、やる気が湧かないからとか、時間がないからとか、何が撮りたいのかわからないとかって言ってる人いるじゃん。順番が逆なんだよね。撮って撮りまくって考えていかなきゃカッコいい写真なんて撮れるようになっていかないよ~。まさか、自分のこと天才って思ってない!?よっ!天才!!』(14年6月 T氏)

 

 

 

 

『50mm(レンズ)だけで作撮りしてみなよ。基本が身に付くから。ズームレンズばかり多用していると、小技だけ器用になるだけだよ。』(12年3月 M氏)

 

 

 

『カメラマンになりたいですか?こういうフルーツの盛り付けをきれいにやってくれるのって大切ですよね!頑張って!!』(「みんなで食べるので、洗ってお皿に乗せて頂けますか?」と頼まれ、手渡されたフルーツをお返しする際に。)(12年3月 編集ご担当者様)

 

 

 

『日本人でも、海外のフォトグラファーにつく人たくさんいるよ。だけど、結局、言葉が追いつかなくて辞めちゃうんだよね。』(15年11月 海外で活躍されているオペレーター氏)

 

 

 

(スタジオに勤めて1年半のスタッフに対して、)『「もう見飽きたよ、このライト。」ってスタジオで腐らないこと。なぜ、こんな面白くない写真を撮る人がカメラマンなのか?なぜ、自分はスタジオマンなのか?それを考えるいいチャンスだよ。』(15年10月 M氏)

 

 

 

 

 

 『小耳にはさんだいい話』。ご興味ありましたら、『名言集』と合わせてご一読ください。

 

 

 


シャブレ・ジブレ・ザ・ベスト

 

気付いたら、このブログを始めて2年が経ちました。そこで、これまでの記事の中から注目度(ページビュー数)トップ10を集計してみました。

 

 

 せっかく、大変な思いをして仕事を頑張るんだから、カメラマン(フォトグラファー・写真家)として生計が立てられるようにならなきゃもったいないぞ。

 多くの人は、夢を現実にしていく過程の中で初めて自分の本当の願望を知るに至ります。大切なことは、自分に夢が実現できるかという不安ではなく、その先にあるものなのです。

 長年、スタッフ自身と、その彼ら彼女らの写真(作品)を見てきて、気付いたこと。

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