より上のステージに上がるために


 例えば、写真を体系的に学ぶ際、数ある要素の一つに「フレーミング」という考え方があります。今はフォトグラファーを目指す人でも、初めてカメラを手にしたころは、ただ被写体をファインダーの中に入れて、夢中にシャッターを押していただけだったかもしれません。でも、そのうち何か物足りなくなってきて、何か工夫をしたくなってくる。そこで、機材にこだわってみたり、様々なことに試行錯誤する中、四角いファインダー内でどう絵作りをするかも考えるようになる。

 

このように、その問題の存在に自分自身で気づくまでは意識していなかったけど、自分の仕事(作品)のクオリティを上げるためには当然マスターしておくべき大切なことって数多く存在します。一流のプロの世界では、和食もフレンチも中華も極めた料理人とか、ファッションでも風景でも静物でもドキュメントでも何でも完璧に撮れるカメラマンとかってあまり聞きません。それは、それぞれの道に気づいておくべき大切なことが数多く存在するからなのです。よくいうところの「奥が深い」って、そういう意味だと思います。

 

ごく稀にいる「天才」なら、こういった問題はすでに自分自身で超越してしまっています。でも、天才ではない人たちは自分で見つけるだけでなく、外部からも積極的に学び取っていかなくてはいけません。ネットや本から単なる知識として「そういった考え方があるんだ」と知るだけでなく、「確かにこれを意識しておかないと全然ダメだ」と、その問題の必要性に実感を持って気づかなくてはいけないのです。

 

「アシスタント」や「見習い」の立場って、厳しく大変ってイメージばかりがクローズアップされがちです。でも、その道を究めていくためには今も昔も、一番手っ取り早い手段であることは間違いありません。一流のプロフェッショナルが、現場で何にこだわり、どういったことに神経を使っているのか。その場に居合わせる自分が、そこから何を見て、どこまで学び取れるのか。意識に上がらなければその存在にすら気づけないから、のんきにやり過ごせていたけれど、その問題の大きさに気づいた瞬間から自分の仕事のクオリティに関わる大切な問題として意識せざるを得なくなること。これこそが、どんな仕事でも今いる自分をより上のステージに上げるために、とても重要なきっかけとなることは間違いないのです。