乗り越えてこそ

 「カメラマン(写真家)を目指そうとすることをご両親はご存じなの?」

 

 「反対とか、心配とかしてない?」

 

 

 

 

 将来カメラマン(写真家)を志す方々とお話しする中で僕が感じていることがあります。ここ数年、スタジオの説明会にお越し頂く方とその親御さんの関係が変わってきたと思うのです。

 

 

 カメラマンを目指そうと考えている若い方から、「でも、親は反対している」という話をほとんど耳にすることがなくなりました。

 

それだけ、カメラマンという仕事がポピュラーになったと喜んでいいことなのか、終身雇用制が完全に崩壊した社会では一般的な職業ですら安定できないからなのか、今どきニートや態度保留中の人が珍しくない中では働く意思があるだけマシなのかは、わかりません。

 

 

 

 でも、どんな業界でも、それなりの結果を望むのであれば、その人には「覚悟」とか「意欲」というものが必要不可欠です。ただし、ここで注意しなくてはいけないことがあります。

 

 

 それは、「覚悟」や「意欲」は、業界に入れば当然のように求められます。でも、受け入れる側はそれを育てることを義務だと考えているとは限らないという現実があるのです。

 

 

 だから、僕は思います。親御さんは、自分の子供がカメラマンになりたいと言い出し、具体的にその業界に飛び込むための準備を始めたならば、「反対」や「心配」を直接本人に伝え、「考え直したほうがいい」と伝えるべきではないかと。

 

 

 親として子供の幸せを願う意味でも、その覚悟や意欲が本物かどうかを見極めるため、その第一関門になって頂ければと思うのです。

 

 

 だって、子供が「自分がやりたいことを親が反対したので仕方なくやめる」って言うのなら、そもそもその程度のことです。親の反対を押し切るだけの覚悟や自立心なくして、この業界でしっかりと自分の居場所を構築していくことなんて、どだい無理な話ですから。

 

 

 

 

 地方から出てきたあるスタッフの話です。彼が、東京のスタジオに入ってカメラマンを目指そうと決意した日、それを当時地元で付き合っていた彼女に話したそうです。

 

 

 すると、彼女は言いました。「カメラマンなんて不安定な職業に就こうと考えるような人と、私付き合っていくのは無理。ゴメン。」

 

 

 遠距離恋愛への望みが打ち砕かれるだけでなく、その最愛の彼女にフラれてまでして、東京に出てきた彼です。彼の覚悟が本物であることは間違いありません(涙)。