フィルム時代

 あるファッション誌の編集をされている方から聞いた話です。

 

 「最近、職人って感じのカメラマンが減ったねー。自分なりの世界観もいいけど、こっちの求めるイメージに近づけられない人が多いんだよね。昔はこうして欲しいと言ったら、さっとライティング変えてピシっと寄せてくれるカメラマンがいたんだけど。時代かねー。」

 

 

 だからといって、安易に「昔は良かった」って話をするつもりはありません。でも、いいか悪いかは別にして、フォトグラファーの業界も以前と大きく変わってきていることは確かです。

 

 その原因は色々あると思いますし、その複合的な要因から実際にどう変わってきているのか、その正解の全てを僕が知っているわけではありません。

 

 でも、自分なりに原因のうちの一つだろうな~と思うことがあります。それが『フィルム時代とデジタル時代のアシスタントに求められる意識の違い』です。

 

 

 写真撮影においてフィルムが全盛の時代、今のデジタル撮影におけるオペレーション作業と同じ意味で、当時のアシスタントは誰もがフィルム周りの一連作業を求められました。スタジオスタッフなら、どんなカメラマンの撮影スタイルや機材に合わせられるだけのスキルとスピードと正確さが必須でした。

 

 

 

 

 当時使われていたフィルムは、ほとんどの場合ポジフィルムという露出にシビアなものでした。だからアシスタントは、自分の露出や現像の管理次第では、取り返しのつかない事故の可能性がある中での作業を強いられていました。

 

 もちろん、現像が上がってフィルムの画像に問題があるとわかった時には、すでに撮影スタッフは解散した後です。当時のアシスタントは、誰もが自分が失敗すると撮影全てが台無しになる可能性のある中で仕事をするのが当たり前でした。

 

 今、プロの撮影現場では99%がデジタルでの撮影です。ご存知の通り、メモリの容量さえ許せば何枚でも撮ることが可能ですし、何よりも現場でリアルタイムに画像が確認できます。しかも、カメラマンはフィルムの頃と違い、撮影内容によっては必ずしもアシスタントがいなくても撮影ができるようになりました。

 

 フィルムの頃に比べ、アシスタントの業務は格段に楽になりました。逆に言えば、アシスタントに強いる責任感や現場への参加意識はめっきり少なくなったと思います。

 

 

 

 

 その結果、『プロフェッショナル』を理解しないまま一人前になったと勘違いする幸せでゆる~いスタジオスタッフが増えたような気がします。根拠となる数値的データがあるわけではないので、あくまでも僕の見聞きする印象の域を出ないのですが。

 

 もちろん、今も昔も、どうやったって成れる人は成っていきます。

 

 「感覚や感性で勝負ができる時代」は「感覚や感性でしか勝負できない時代」になりつつあるのかもしれません。

 

 お後がよろしいのか、僕にはわかりかねますが。