外苑スタジオの想い出

 今から2年半前。私が入社した当時、スタジオには厳しい先輩が何人もいて、現場はとにかく怖いところだった。

 

 

 入社から三カ月の研修期間は、機材名を覚えるだけでなく、スタンド類の扱い方やライトボックスの組み立て方など、スタジオスタッフとしての基本を教わる。私にとっては全ての機材を把握するだけでもやっとなのに、撮影の現場ではそれらを間違いなく、安全、スピーディーに使いこなせなければならない。体力的にも精神的にも本当に大変な仕事だと感じていた。

 

 不器用な私は、必要な機材を他の場所から持ってくるだけの作業ですら、プロの現場が求めるスピードで出来ず、よく先輩からは注意を受けていた。しかも、毎日のように研修期間内にクリアすべきカリキュラムの勉強は、深夜まで続く。

 

 

 

 

 そんな私だったが、研修期間も過ぎ、徐々に先輩の言っている指示が理解できるようになってくると、体が自然に動けるようになってきた。そして、それまでわかっていなかったことがたくさんあることに気付いていった。

 

◎ 自分の中で「今日の仕事はここまでやれば充分」と、感覚的に勝手な上限を決めていた。

◎ 自分が起こしたミスに、落ち込んでみせても良いと思っていた。

◎ 自分の置かれた現実は辛いので、元気なんか出るわけがないと思っていた。

◎ 先輩や上司に怒られたときは、反省しているフリをするのが得策だと思っていた。

 

 そして、このような問題の解決につながらない自分の行動に、時間をかけることはやめようと心に決めた。それよりも、なぜ自分は出来なかったのか、なぜそのような結果になってしまったのか、その原因や理由を考えて、2度と同じミスを起こさないよう努めるようにした。

 

 すると、仕事の中に良い循環ができてきて、もっとワクワクするやり方だとか、もっとこうするといいんじゃないか?という発想が湧くようになり、いよいよ仕事も楽しくなってきた。

 

 

 

 

 今、振り返ってみると、最初の頃はただ単に先輩が後輩である自分に厳しく当たっていると考えていた。そのうち、先輩達は人に厳しいのではなく、仕事に厳しいのだということに気付いた。そう考えるようになって、仕事に対し妥協しない姿勢の大切さを心から理解した。

 

 この姿勢を継続していくことで、これからの自分に立ちはだかる難問も、自分の中へ落とし込み、確実に自分の身になっていくことで次のステップにつなげていけるように感じる。

 

 

 外苑スタジオに入って良かった。途中であきらめず続けてきて良かった。今なら、ここで経験したことがこれからの自分にとって貴重な財産になると自信を持って言うことができる。更なるステージも、このスタジオで得た「突破口を切り開く必殺技」を使って切り抜けていけるだろうから。

 

 

 

 

(先月付でスタジオを退社し、フォトグラファーのアシスタントに就いた元スタッフからの手紙)