彼にまつわる僕が知っているいくつかのこと

背が高く、オシャレで、声は低く、僕とは違って若くて痩せています。彼に言ったことはありませんが、彼をカッコいいという女性を僕は何人も知っています。

 

同性の僕が見ていてもカッコいいと思うのは、その見た目だけでなく、自分の視点とか世界観のためには妥協を許さない一本筋のある人だから。彼の「写真へのこだわり」その尋常ではない熱さは、僕が初めて知り合ったスタジオスタッフの頃から10年以上、今も変わることがありません。

 

ある日、彼が愛おしそうにカメラを撫でていたので(少なくとも僕にはそう見えた!)、「あれ?カメラ買ったの?」と聞いたことがあります。すると彼は僕にそのカメラへの愛を熱く語ってくれるのです。

 

 

 

 

そんな彼ですから、後輩にあたる現役スタッフが、彼に作品撮りのことを聞けば、これまた情熱的に彼の考えを語ってくれます。

 

「作撮り(作品撮り)は、自分の撮りたいものを撮りたいように撮った方がいいよ。直アシ(フォトグラファーの専属アシスタント)に就いたらそんなことやってる時間ないし、その後独立したらしたで無いからね。要は作撮りを遊べる時に遊んでおきなってこと。」

 

「ただ、作撮りは思いっ切り振り切れたものを撮らないと意味ないよ。自分の世界観もない中途半端なもの撮っても、もし、それで仕事に繋がったら、それと同じもの撮らないといけなくなるわけだし、面白くないからね。」

 

 

 

 

また、スタッフが彼にレタッチを勉強しておくべきかと聞いたときの答えはこうでした。

 

「レタッチは、スタジオマンの今は、そこそこ出来ていればいいよ。師匠につけば、少なからず影響は受けるし、その時に突き詰めればいいんじゃない?レタッチやり出したら止まらないでしょ。それより、シャッター切らなきゃ!」

 

 

 

 

以前、スタジオに作品撮りで来た時があります。古い4×5カメラにフィルムで撮影する彼に、スタッフはなぜなのかを聞いたそうです。

 

「なんでフィルムで撮るかっていうと精神論の話になるな…。デジタルだと後でなんとかなるし、その場で確認もできる。失敗が無いなんて被写体に真っ直ぐ気持ちが向かない。これは自分に対する嘘だと思うんだよね。」

 

「フィルムは、シャッターを切る時と焼く時、2回写真を撮ると思ってるんだけど、これがいい。シャッター切る時はすごく集中するし、焼く時は反省点がしっかり見えてくる…。だから、仕事はデジタルで最初撮るけど、その後4×5も出すんだよ。でね、現場の空気が変わるんだ、これが。スタイリストもヘアメイクも被写体を真剣に見つめるようになるの(笑)。いいよね、そういうの!」

 

「ちなみに今日の作品撮りはオレが好きなものの再確認にきたの!これは定期的にやらないとダメなんだ。キミも、本当に好きなもの撮ってる?」

 

 

 

今、渋谷109のビルの壁面を飾っているのは、彼の撮影によるものです。(2017年11月19日まで)

 

 

 

 

その彼が来月12月1日より写真集の出版を記念して個展を開催します。会場のギャラリーで買う写真集を持って、本人にサインと握手をしてもらうべく、列を並ぶのが今から楽しみな僕なのです。

 

 

THE AMERICAN FARMERS EXHIBITION

2017.12.1.fri - 4,mon 12:00 - 20:00

2017.12.1.fri 12:00-21:00

WAG GALLERY

150-0001

東京都渋谷区神宮前4-26-28

JUNK YARD 3F

4-26-28 Jingumae Shibuya-ku Tokyo 150-0001

www.wag-gallery.com