自信とメンタル

 

 「私、メンタルが弱くて、自分に自信が持てないというか、なにか失敗するとすぐ落ちちゃうんです。これじゃいけないって自分ではわかっているんですけど、落ちちゃってることでまた失敗しちゃって、ってどんどん雪だるまみたいになって……、他の人みたいに自信持てないんですよね。どうすればメンタル強くなれるんですかね?」

 

 ブログのネタ、何かない?ってスタッフみんなに聞いていたら、この春入社の新人スタッフが、こんなネタを提供してくれました。カウンセラーとかメンタリストが得意そうな分野ですが、僕はスタジオマネージャーなので、マネージメント的視点でお答えします。

 

 

 まず、「私」には勘違いしていることがあります。それは、他の人もみんな自信あるわけではないってことです。そもそも、自信なくてメンタル弱いのが普通の人なのです。だから、みんな自分にウソついちゃったり、グチってみたり、途中で投げ出しちゃったりしているのです。

 

 

 大きなビルが丸ごと本屋さんになっている新宿の紀伊国屋書店。その7階「語学・辞書」の広大なフロアーは、1/3が英語に関する本です。洋書ではなく英語を学びたい人向けの本ばかり、数えていないので何冊あるのかわかりませんが、その数はざっと見積もっても何百ではなく何千冊という単位です。

 

 出版社からすれば、英語の辞書や教本にはそれだけニーズがあるからこそ、多様な本を出しているのです。これって、裏を返すとみんな英語や英会話の勉強を試みるものの途中で挫折して、やがてまた発奮して次はもっと自分に適した英語の本を探し求め、また挫折するってことを繰り返しているだけのことです。

 

 

 また、残念ながらメンタルが強くなる即効性ある方法はありません。そもそも、その望みってタバコを散々吸いまくっていた人が「禁煙」ではなく、いきなり「きれいな肺」を手に入れたいって望むようなものです。僕のようなメタボなお腹のおっさんが、今夜のデートまでにバキバキの腹筋を手に入れたいって言ってるようなものです。ライザップだってお手上げな話なのです。

 

 

 この業界に入れば、スタジオスタッフの間はもちろんのこと、カメラマンのアシスタントになっても、フォトグラファーになったって、ず~っとメンタルにプレッシャーがのしかかり続けます。しかも、ステージが上がれば上がるほど、そのプレッシャーは重く大きくなるものです。

 

 

 スタジオの面接をしていると「将来は広告のフォトグラファーになりたいです。」と言う方が大勢います。でも、その広告こそ、報酬が大きくなればなるほど、そのプロジェクトも予算も大きなものとなり、クライアントの意気込みも、フォトグラファーへの期待も、その撮影に携わる関係者の数も、失敗は絶対に許されないプレッシャーとなって重くのしかかってくるのです。

 

 だから、この業界に入った以上、メンタルにかかるプレッシャーとは上手に付き合っていくしかありません。そこから完全に逃げたいのなら、アマチュアカメラマンになるしか他に手はありませんから。

 

 楽しみながら頑張り続けていくこと。そうやって、一つひとつ乗り越えていくうちに、乗り越えてきた自分に誇りが持てるようになるのです。

 

 今の自分に自信が持てないのは、今のままの自分では満足できないっていう向上心の現れ。いたって健全。がんばれ!新人